一夏の指紋 散弾かも知れぬ | 市原 光子 |
蓮池の蕾にふれてゆくものぞ | 亀山祐美子 |
梔子や十日の赤子抱いて出る | 小山やす子 |
ぽんぽんダリア指から落とす昼の月 | 久保 智恵 |
滴りやまっすぐな木に囲まれて | 河野 志保 |
撫子は可憐な花よ川流る | 木しげ子 |
蟻の道歩く少年兵の月 | 豊原 清明 |
太陽はいつも新し草ひばり | 野崎 憲子 |
舌平目またの名靴底(クッゾコ)なり炎天 | 野田 信章 |
輪廻する黒猫すいっと昼寝覚 | 増田 天志 |
浮力あり夏鴨一羽ぼうぼうと | 矢野千代子 |
人馬一体ひだりへ傾ぎ夏の逝く | 若森 京子 |
盆の水押し上げてゐる亀の首 | 亀山祐美子 |
おいおいおい此の蓮見んで何処へ行く | 小山やす子 |
紅蓮の中に白蓮のぞきけり | 木しげ子 |
狂言の奥に紅蓮の蕾あり | 野崎 憲子 |
風呼ぶは透けてゆくこと蓮の華 | 増田 天志 |
「無花果」 | 無花果の葉裏に軍艦を忘れ | 増田 天志 |
「手」 | 手のひらの口へゆきけり赤とんぼ | 亀山祐美子 |
「赤とんぼ」 | こもれ日に一つ増えたる赤とんぼ | 木しげ子 |
「水」 | 水あめの中に私の夏の海 | 小山やす子 |
「ペ−ジ」 | 月光に薄目をあけるペ−ジかな | 野崎 憲子 |