香川句会報 第15回(2012.2.18)於、サンポ−トホ−ル高松
<高橋たねを氏一周忌追悼句会の一句>
地球という雪玉たねをワールドへ | 中村ヨシオ |
はにかみの癖の一基に玉霰 | 若森 京子 |
なに言うとなく側にいる玉手箱持って | 斉木 ギニ |
蟹臭い指で少年火取玉(ひとるたま) | 遠山 郁好 |
玉揺れて白い肌から春の風邪 | 豊原 清明 |
地に黒い風評生まれ寒玉子 | 小山やす子 |
玉乗りの日の斑遊ばせ遅々と春 | 市原 光子 |
春浅し八栗屋島は玉のなか | 木しげ子 |
歯にしむ真水玉椿ほつと落ち | 竹田 昭江 |
春立ちにけりけん玉の長き紐 |
涼野 海音 |
玉章(たまずさ)や浮桟橋のハンチィング | 新田 幸子 |
陽炎や目玉をしゃぶる風童子 | 野崎 憲子 |
きさらぎの布ありごわごわ素のぬくみ | 矢野千代子 |
小正月 月が爪磨く化粧する | 侑 海 |
わた雲が溢れてみんな魚です |
久保 智恵 |
カトレア咲くオールドグラスは何故か二個 | 樽谷 寛子 |
病む人を抱けぬ夜の星冴ゆる | 鈴木 幸江 |
玄米(こめ)に告げる線量計であることを | 稲葉 千尋 |
ありし日のいちぎょう冬の木立かな | 田口満代子 |
いづかたへ行くもこっぽりす細雪 | 三井 絹枝 |
牟礼町歩く嚏はたねを氏か | 山本 昌子 |
誰の眼を逃れて昏き藪椿 | 亀山祐美子 |
風雲児 水辺の鷺や春浅し | 古澤 真翠 |
化野に到るたねを氏の忌なりけり | 武田 伸一 |
冬ざくら死者にほどけるようにかな |
谷 佳紀 |
しんしんと闇刻む音 海に雪 | 阿保 恭子 |
おもかげの片頬にある赤とんぼ | 伊藤 淳子 |
亀鳴かすあんたの嫌うものが好き | 柴田 清子 |
蚕豆というやわらかい疵である | 小西 瞬夏 |
マフラーをゆるめて夜がもうひとつ |
河野 志保 |
もちの木の小さき赤い実鳥を呼ぶ | 漆原 義典 |
田鶴の野に目覚めて複式呼吸かな | 野田 信章 |
春の岸じゅげむのような人と居る | 小林寿美子 |
麒麟ほどしずか玉椿も菫も | 柳生 正名 |
昨年2月12日に、香川句会代表の高橋たねをさんが肺炎の為に急逝されてから、はや1年が経ちました。
今回は、高橋さんを偲び県外の「海程」有志の方々も、ご投句くださり、たくさんの個性豊かな作品があつまりました。
全句掲載できないのが残念です。
<イサム・ノグチ庭園美術館吟行句、及び二次句会参加者の一句>
囀りの今年は早いねたねをさん | 鈴木 幸江 |
小豆島の石に手袋ぬいでさわりぬ | 木しげ子 |
早春のひかりは石をつらぬくか | 柴田 清子 |
みな人だ烏も陽炎も岩も | 野崎 憲子 |
二ン月の石切り山は無題です | 柴田 清子 |
金ぱくとか泥かぶりの石空へむけ | 木しげ子 |
風花やイサム・ノグチに逢ってきた | 小山やす子 |
枯れ柳とろりと午睡石の群 | 小山やす子 |
陽炎から嘴の出て歩き出す | 野崎 憲子 |
怯えると笑う鏡のまえの焚き火 | 斉木 ギニ |
鬼追ひし屋島裏口風花す | 亀山祐美子 |
天国から落ちてきた庭冬陽射 | 鈴木 幸江 |
波頭まで皆んなカナリア肩にのせ | 斉木 ギニ |
風花を呼ぶ樹の高し石微熱 | 亀山祐美子 |
18日の香川句会、午前中は、滋賀から鈴木幸江さんが初参加され、六名で牟礼町のイサム・ノグチ庭園美術館へ吟行に行きました。
曇り空の中、ノグチが八十歳からの五年近くを過ごしたという住まいや、彼が植えた背の高いユーカリの木が早春の風に大きく揺れて、
「ここに私は居ます!」と手を振っているようでした。庭園には、「地球を彫刻する」と言っていたというノグチの、石の作品群が所狭しと並び、
時空を超えた風が吹いているようでした。
午後からの句会は、千葉から斉木ギニさんも初参加され、それぞれの思いのこもった吟行句や追悼句が出されました。五句提出、五句選。
熱のこもった合評は、句会終了ぎりぎりまで続きました。高橋さんも、どこかでニッコリされていらっしゃるような思いがいたしました。
鈴木さん、斉木さん、遠路おいでくださり有り難うございました。ご参加のみなさま心から感謝申し上げます。