<事前投句参加者の一句>
『 題詠 : 種 ・ 蝶 』
種蒔きの人の亡くなり荒野かな |
古澤 真翠 |
種芋をゆっくり育てと撫でる母 |
漆原 義典 |
轍には轍のこころ種の起原 |
野﨑 憲子 |
水の星の水のソムリエ蝶の口 |
三好つや子 |
蝶々や釣人のいて話しこむ |
髙木しげ子 |
暮れなずむまでの浜辺へ金の蝶 |
桂 凛火 |
紋白蝶純文學のかたちして |
若森 京子 |
老いという優柔 風を蝶結び |
市原 光子 |
きれいに包む初蝶が逃げぬよう |
小西 瞬夏 |
白蝶のとても静かな大騒ぎ |
月野ぽぽな |
菜の花の五本もあれば凶器です |
柴田 清子 |
沈丁花広がる夜ののっぺらぼう |
河野 志保 |
長い欠伸まんさくの軋みであり |
矢野千代子 |
春やひとりの強飯てんぐの山に向き |
野田 信章 |
余震なお春の土もる土竜かな |
稲葉 千尋 |
かの春に会釈し土を掘る仕事 |
KIYOAKI FILM |
蛇出づれば医学部合否発表日 |
野澤 隆夫 |
春だ春だ水は真珠になりたがる |
増田 天志 |
啓蟄や微粒子被って通りゃんせ |
侑 海 |
春疾風大地離れぬ足裏かな |
亀山祐美子 |
春の海ひねもす悔いるな悔いるなよ |
小山やす子 |
<「雛の日」の巻>
同窓会集ひしところ月うさぎ |
義 典 |
秋刀魚のにほひ残る路地裏 |
海 音 |
引き返せない恋に落ちたり |
清 子 |
いまさらに影を慕いて口遊む |
侑 海 |
招き猫よりつややかな瞳 |
祐美子 |
鳥笛に誘われ出て歩き出す |
しげ子 |
難破船より泡(あぶく)が一つ |
憲 子 |
月涼し衿足深く抜けてをり |
祐美子 |
<句会メモ>
午前中は、JR高松駅前の玉藻公園へ吟行に行きました。 園内の空き地では植木市、披雲閣ではお茶会がひらかれ、春色の光に包まれていました。
岩の裂け目に生えた「ど根性松」も十八年目の春を迎えていました。さくらは、まだ蕾ばかりでしたが、太い幹も枝も、うす紅に色づいていました。
午後は、事前投句の合評の後、滋賀から来高された海程の仲間、増田天志さんの捌きで、半歌仙「雛の日」を巻きました。
午後の句会から、久々の参加である涼野海音さんもまじえ、出席者全員で、午後五時ぎりぎりまで楽しみました。天志さん、ご指導ありがとうございました。
連句の、前へ前へと巻いて行き、最後は、ほのぼのと後に続く形で終わる世界に限りなく惹かれます。
野﨑憲子記