「海程」香川句会報 第27回(2013.3.16)於、サンポ-トホ-ル高松


 


<事前投句参加者の一句>

『 題詠 : 種 ・ 蝶 』

種蒔きの人の亡くなり荒野かな 古澤 真翠
種芋をゆっくり育てと撫でる母 漆原 義典
轍には轍のこころ種の起原 野﨑 憲子
水の星の水のソムリエ蝶の口 三好つや子
蝶々や釣人のいて話しこむ 髙木しげ子
暮れなずむまでの浜辺へ金の蝶 桂  凛火
紋白蝶純文學のかたちして 若森 京子
老いという優柔 風を蝶結び 市原 光子
きれいに包む初蝶が逃げぬよう 小西 瞬夏
白蝶のとても静かな大騒ぎ 月野ぽぽな
菜の花の五本もあれば凶器です 柴田 清子
沈丁花広がる夜ののっぺらぼう 河野 志保
長い欠伸まんさくの軋みであり 矢野千代子
春やひとりの強飯てんぐの山に向き 野田 信章
余震なお春の土もる土竜かな 稲葉 千尋
かの春に会釈し土を掘る仕事 KIYOAKI FILM
蛇出づれば医学部合否発表日 野澤 隆夫
春だ春だ水は真珠になりたがる 増田 天志
啓蟄や微粒子被って通りゃんせ 侑    海
春疾風大地離れぬ足裏かな 亀山祐美子
春の海ひねもす悔いるな悔いるなよ 小山やす子



<「雛の日」の巻>


雛の日の玩具転がる男客 やす子
  赤い物着て遠く野遊び 祐美子
ゆく春に大和言葉の木霊して 憲 子
  星に湧き立つ賑賑し夢 侑 海
同窓会集ひしところ月うさぎ 義 典
  秋刀魚のにほひ残る路地裏 海 音
再びの間違ひ電話秋の宵 たかお
  引き返せない恋に落ちたり 清 子
いまさらに影を慕いて口遊む 侑 海
  招き猫よりつややかな瞳 祐美子
鳥笛に誘われ出て歩き出す しげ子
  難破船より泡(あぶく)が一つ 憲 子
月涼し衿足深く抜けてをり 祐美子
  風鈴りんとけじめつけたし 侑 海
日の落ちて湯屋脱衣箱一番へ たかお
 牛乳びんに活けし野の草 海 音
風吹けば風の真言花ひらく 憲 子
 雲は駱駝にのどかなる昼 天 志


<句会メモ>

午前中は、JR高松駅前の玉藻公園へ吟行に行きました。 園内の空き地では植木市、披雲閣ではお茶会がひらかれ、春色の光に包まれていました。
岩の裂け目に生えた「ど根性松」も十八年目の春を迎えていました。さくらは、まだ蕾ばかりでしたが、太い幹も枝も、うす紅に色づいていました。

午後は、事前投句の合評の後、滋賀から来高された海程の仲間、増田天志さんの捌きで、半歌仙「雛の日」を巻きました。
午後の句会から、久々の参加である涼野海音さんもまじえ、出席者全員で、午後五時ぎりぎりまで楽しみました。天志さん、ご指導ありがとうございました。
連句の、前へ前へと巻いて行き、最後は、ほのぼのと後に続く形で終わる世界に限りなく惹かれます。


                                                                                        野﨑憲子記

                    
                                                                               




 


 

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