香川句会報 第29回(2013.6.15)於、サンポ−トホ−ル高松


 


<事前投句参加者の一句>

『 題詠 : 蛍 ・ 柱 』


蛍ですか約束をした時間です 小西 瞬夏
ほうたるや星に命を貰いける  侑   海
生返事ばかりしていて蛍です 月野ぽぽな
やわらかなはちまきでありほうたろの光(ひ) 久保 智恵
風神の雷神の貌ほうたる 野ア 憲子
きのうとはちがうホタルを身に纏い 古澤 真翠
あだし野や唇はもう螢袋 若森 京子
蛍光の指立てていく夜の新樹 市原 光子
都会(まち)薄暑あおいあおい魚柱 三好つや子
光る海みつめておれば眠くなり 木しげ子
竹皮を脱ぐくらくらと笑う男 桂  凛火
帆船五月ピッと鳥糞ありしかな 野田 信章
黄水仙内耳はいつもけむるかな 稲葉 千尋
薫風や佐村河内の曲はブル− 野澤 隆夫
あぢさゐが真昼の音を出してゐる 柴田 清子
かたばみはないしょばなしがにがてなの 亀山祐美子
逃げ水や憮然と女白バイ隊 小山やす子
大空に耳を澄ませる青蛙 増田 天志
スリッパ揃えとうすみとんぼあだしのへ 矢野千代子
眼鏡橋職人魂灼熱だ 漆原 義典
ぼうふらや人気がなくてへっちゃらで 河野 志保
はりまや橋青は快速の輝き KIYOAKI FILM



<袋回し句会>>


<蟻>
蟻塚や空を集めて静まりぬ  侑  海
午後二時の蟻に追いつく独身者(ひとりもの) 亀山祐美子
山蟻は姥捨山を知ってゐた 柴田 清子
<父の水筒>
父の水筒夾竹桃が又咲いた 小山やす子
蘭鋳が父の水筒の中にゐる 柴田 清子
<空梅雨>
空梅雨やDJポリス片笑窪 野ア 憲子
空梅雨や父の水筒重くなる  侑  海
<腕>
くろがねの腕夕顔閉じはじめ 小山やす子
母の日や腕捲りして厨(くりや)立つ 野澤 隆夫
<梔子>
薬局は二百メートル梔子咲く 野澤 隆夫
梔子の匂いつよけれ風も又 木しげ子
<海紅豆>
海紅豆ひとりの海のあをさかな 亀山祐美子
九条は日本のこころ海紅豆 野ア 憲子



今回初めて、事前投句の合評の中で、「海程」の勉強会で実施されている<問題句>を選句の中の一句に加えてみました。
その作品のどこが難解なのか、それについて、他の方(特に、選に入れた方)はどう思うのか話し合いました。
私は、作曲家「佐村河内 守」の名前を知らず、句稿の中で、佐村河内のことを知りました。運よく、作者の野澤隆夫さんが、参加されて
いましたので、解説していただきました。知識を得て、ますます好きになった作品でした。金子先生も、可能性を孕んだ冒険句や問題句
を句会の中で積極的に取り上げて、意見を言ってくださいます。
今月も、気合の入った魅力的な作品が多く、大いに盛り上がりました。ご参加の皆さま有難うございました。

袋回し句会では、小山やす子さんの出された<父の水筒>という面白いお題を、参加者一同、苦労して一句に仕上げました。先の戦争が
奥にあり、味わい深い作品が多かったです。また、<海紅豆>は朝の吟行の途中で見つけたと、亀山祐美子さんが実物を持ってきてくださ
いました。ゾクっとする作品ひとつ、作者のご意向でカット。掲載できず、ちょっと残念です。

 <問題句>は、当日の句会の中で、これからも取り上げて行こうと思っています。積極的な意見がたくさん出て、とても熱い句会でした。
来月も楽しみにいたしております。

                                                                         (野ア憲子記)

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