香川句会報 第41回(2014.07.19)於、サンポートホール高松
事前投句参加者の一句
朝採りの鋏の緊まる茄子の紺 | 稲葉 千尋 |
少年の濡れた素足を體といふ | 小西 瞬夏 |
枇杷剥いて明日あることを疑わず | 谷 孝江 |
短夜の首もてあますフラミンゴ | 三好つや子 |
台風来きゅうり揉みなどしておりぬ | 加藤 知子 |
颱風一過大きな絵本差し出され | 竹本 仰 |
雨ざんざ牛の目のまたたきもせず | 上村 良介 |
夏蝶を死なす濃く透く卵たち | 桂 凛火 |
田植えどき奥で指揮とる母元気 | 漆原 義典 |
俎板にそっとおかれた初茗荷 | 中西 裕子 |
夏帽子そらへ還れるやうに白 | 高岡 晶美 |
頬に添ふ風とハミング青田かな | 侑 海 |
皮下脂肪オールフリーなら水でしょっ! | 尾崎 憲正 |
白鷺は虹を咥えて飛び立てり | 木しげ子 |
筆跡のまだあどけなく星祭る | 景山 典子 |
あいたくない奴にばったり大夏野 | 丸亀葉七子 |
七夕やゴジラが庭を覗いてる | 野澤 隆夫 |
満月のとけて流れて蟇 | 野ア 憲子 |
日焼けの子七色ペンで象を描く | 三枝みずほ |
こころに隙(げき)こんなにもおじぎそう | 久保 智恵 |
探検隊ピシャピシャピシャーン梅雨の道 | 藤田 乙女 |
赤い鼻緒のたましい集まる鬼灯市 | 若森 京子 |
紫陽花よ鏡の中は私だけ | 河野 志保 |
露地の風蓮控え目に立ち昇る | 古澤 真翠 |
戻り梅雨国家論者のダンディズム | 重松 敬子 |
密約の罌粟の花ゆれるようワイン | 月野ぽぽな |
逃げ足のセクシーな蜘蛛放蕩爺 | 小山やす子 |
方舟だろうか炎昼の石舞台 | 増田 天志 |
青葉木菟防空頭巾の世が来るぞ | 野田 信章 |
萍よ括弧はずれてつまらない | 矢野千代子 |
柿青む水売りの町塩の街 | 亀山祐美子 |
父の脚と陽だまりの近く影産まれん | KIYOAKI FILM |
無鉄砲の旅の終りは山法師 | 高橋 晴子 |
アイスティーひとくち分の梅雨晴間 | 田村 杏美 |
銀河鉄道夜の金魚と乗り合わす | 市原 光子 |
句会の窓
- 野澤 隆夫
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特選句枇杷剥いて明日あることを疑わず=c今日、枇杷を食べたという、ささやかなことにも、明日への喜びを感じる幸せ。問題句夏芝居好事家総長大俗人=c全て漢字で書かれているも、調子の良い韻律。好事家=大俗人が面白い。私の投稿句のこと梅咲いて庭中に青鮫が来ている 兜 太≠思い出し、7日(月)、雨の七夕の夜、小生作句が、七夕やゴジラが庭を覗いてる 隆 夫<Sジラの覗いた次の8日(火)の夜半、ゴジラが出現しビックリ。NHKのBSプレミアムでのことですが…。今回の袋回しおおかみに蛍が一つ付いていた 兜 太≠受けて作句するのも、小生はうまくできなかったが、頭の体操になり面白かったです。
- 月野ぽぽな
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特選句「夜の蝉ささえあふほど鞭もてり」・・・「ささえあふほど鞭もてり」の心理的屈折にに見所あり。昼には生命力を感じる?の鳴き声も夜に鳴くとなるとかなり不気味であり中七下五の心理をより響かせる働きをしている。
- 景山 典子
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特選句「日焼けの子七色ペンで象を描く」カラフルなペンで描く夏休みの楽しい思い出。象までも七色のペンで描いてしまった、常識にとらわれない子どもの自由な発想が素敵です。問題句「銀河鉄道夜の金魚と乗り合わす」むしろ魅力を感じる句です。ただなぜ金魚を登場させたのかが私の連想力不足のため分かりませんでした。作者の意図をお聞きしたい。
- 丸亀葉七子
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今朝初めて今年の蝉を聞きました。楽しい句会です。何を言っても許されて、大らかに受け止めてもらっています。「杉菜生う父の戒名忘れがち。」父母の戒名はいつも忘れている私に反省を促す句です。「海程」六月号に、こしのゆみこさんの句「花びらいくつかは白結氷期」の鑑賞で塩野谷仁さんが、こう言っておいでです。配合の句の時、季語と心情が近過ぎれば只事となり、遠過ぎれば難解となる。距離感が求められる。杉菜の季語、さて距離感は、私には、しっくりとこないのです。難解です。句会で難解の句が出たとき、若い方たちの鑑賞を聞いて、いつもああ成程と納得いたします。父の戒名に、もっと付かず離れずの季語があるのではないかと思ったのですが?
- 増田 天志
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特選句「戻り梅雨国家論者のダンディズム」知識階級は下放すべし!と叫びたくなる句。取り合せの妙。問題句「少年の濡れた素足を體といふ」悪い事言はへん、鱧にしときなはれ。
- 亀山祐美子
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参加者の年齢の広がり男女の割合、おもしろい句会で参加が毎回楽しみです。『すぎ菜生う父の戒名忘れがち』を特選に頂きました。お父様を亡くされ久しいのでしょう。土筆の後に生える、利尿剤になる「杉菜」がふと目についた。そうゆう漢方薬が必要な年齢になっている自分に驚き、晩年の父を思い、父の戒名を忘れていた事に気づかれたのでしょう。その間の時間の流れ、死者を悼むと共に日常を重ねる日々。きっと豊かな日々だったのだと思います。これからもきっときっと豊かな日々が待っていることでしょう。さて、『心太備えあれば患い無し』を問題句としました。他に、『枇杷剥いて明日あること疑わず』『うどん食ぶ昔も今半夏生』も気になりました。「備えあれは患いなし」「明日あることを疑わず」は慣用句であり、どの季語にもある程度馴染む、手垢の付いた言葉で、楽をし過ぎています。「うどん食ぶ昔も今も」は季語の説明になっています。『馬から落ちて落馬して』と同様です。類句類想を避ける為にも、私自身を含め、もっともっと自分の言葉を探し、突き詰める必要があります。また、初学のおり、「俳句は今この時の、この一瞬の命、魂の感動を言葉で絵を描く」と教わりました。よって、一句そのものが「命」「魂」の発露に外ならないのだから、この語彙は一句には不要だと教わりました。老婆心ながら、若い方がいらしゃいましたので取り上げました。皆様のご意見を伺えれば幸です。皆様の選評楽しみに致しております。ではまた来月お目にかかれますこと、楽しみに致しております。
- 漆原 義典
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特選句「赤い鼻緒のたましい集まる鬼灯市」夏の夜の鬼灯市の情景を赤い鼻緒のたましい集まると表現された感性の素晴らしさに感動しました。情景が目に浮かびます。
- 三枝みずほ
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土曜日はお世話になり、ありがとうございました。今回の特選句「探検隊ピシャピシャピシャーン梅雨の道」梅雨の道をこんなにも楽しそうに好奇心たっぷりに探検できるのは、子供のなせる技でしょうか。「ピシャーン」は何かを発見した時の水音と心の高鳴りのように思えて、好きな句でした。問題句「萍よ括弧はずれてつまらない」実は句の意味がとれませんでした。でも、萍と括弧がどう繋がっているのか作者に聞いてみたい気になる句でした。
- 尾崎 憲正
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特選句「枇杷剥いて明日あることを疑わず」今が旬の枇杷を剥きながら、平穏な日々が続くことを願う気持ちに共感を抱きました。大げさな表現を用いずに、人の暮らしぶりの真理を突いた句であると思いました。問題句「七夕やゴジラが庭を覗いてる」選句の時間内では、この句に表された景色を想像することができませんでした。時間をかけて読み解いてみたい句です。
- 侑 海
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特選句「筆跡のまだあどけなく星祭る」星祭りの儚さ、可愛らしさを上手く捉えていると思う。特選句「逃げ足のセクシーな蜘蛛放蕩爺」凄くペーソスあって笑える。問題句「心太備へあれば患ひ無し」心太と患い無しがどうつながるか分からなかった。句兄弟、新しい試み面白いです。色々な有名なかたの俳句を観賞するのを楽しみにしております。8月にも俳句甲子園楽しみです。
- 三好つや子
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特選句「逃げ足のセクシーな蜘蛛放蕩爺」上五と中七の表現が素敵。こんな放蕩爺さんとUSJのハリーポッターエリアへ行きたい。「萍よ括弧はずれてつまらない」「目高飼い・・・」の句と、どちらを問題句にしようか迷ったが、括弧というものへの深い考えが感じられたので、選びました。問題句「目高飼い団塊世代烟りおり」中七と下五で、団塊の世代を実感。しかし、目高を飼うという感覚は安易だと思う。
- 竹本 仰
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特選句「銀河鉄道夜の金魚と乗り合わす」これは、賢治さんの「銀河鉄道の夜」を下敷きにしたものでしょうか。たとえ想像の句であっても、「夜の金魚」に大変リアルなものを感じました。銀河鉄道に乗り合わす人たちの、あの独特の「わからない」感がよく出ています。あの世界は、生死の境目だから、当然「わからない」感がもっともリアルだと思うんです。私も「わからない」派のひとりとして、この俳句の匂いに何かうずくものを感じました。特選句「夏蝶を死なす濃く透く卵たち」作者は、夏蝶をついうっかり殺してしまったのでしょうか?いろんな可能性を奪ってしまった、ああ、多くの飛ぶ蝶の子孫たちが見えるというところでしょうか。「死なす」という言葉がいいです。吉野弘の詩「I was born」を思い出します。生は受け身なもの、生かされたが正しいという認識を知った驚きのようなことを言った詩だったかと思いますが、死についても「死なす」とよく人は言います。先日もある老人が奥さんを亡くした時に、「ああ、家内を死なせた」とぽつりと漏らしていました。もちろん、作者の場合は、偶然に手を下してしまったのでしょうが、その因縁に思いはせたところが「濃く透く」によく出ています。問題句「トマトの照り行間たっぷりあけて書く」個人的には大変好きな句ですが、「書く」は、この作品の世界を狭くしているのでは?「描く」とするか、「おく」とするか、「行間たっぷり」がとても面白いだけに何だかもったいないなあと。
- 小西 瞬夏
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特選句「銀河鉄道夜の金魚と乗り合わす」銀河鉄道にだれかと乗り合わすというファンタジー。そのだれかを、作者は「夜の金魚」とした。夜の金魚をじっと見たことはあまりないが、もしかしたら、ときどき金魚鉢をぬけて、銀河鉄道に乗るのかもしれないと思わせる。「金魚」という季語のイメージが句を際立たせている。問題句「夏蝶を死なす濃く透く卵たち」・・「死なす」「濃く」「透く」と概念の言葉が並びすぎではないか。せめて「濃く」か「透く」の片方にしてほしい。もう少しイメージを確実に広げられる手がかりがほしい。
- 高岡 晶美
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特選句「短夜の首もてあますフラミンゴ」取り合わせの妙、の一言に尽きると思いました。フラミンゴの長い首に対して「短夜」という季語の選択であったり、フラミンゴの首を折り曲げている様を「もてあます」とした表現であったり、そのひとつひとつが丁寧に観察されて、考えられたものであると感じました。また、「短夜」であるからこそ、首を「休ませる」や「折り曲げる」ではなく「もてあます」のだという気付きがありました。色も鮮やかで、視覚でも楽しめそうです。
- 重松 敬子
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特選句「台風一過大きな絵本差し出され」この取り合わせの妙に感心。いろいろ想像がふくらみます。問題句「指切りの小指冷たし桜桃忌」上五中七が桜桃忌とは合っているようで、合ってないように思うが・・・・・。
- 上村 良介
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今月の誤読●「置き去りのO嬢の椅子夕立くる」。0嬢といえば、だれしもあのポーリーヌ・レアージュの傑作「O嬢の物語」のヒロインを思い浮かべるに違いない。支配と被支配に関する物語だ。そして被支配者が聖なる者へと昇華する衝撃の結末。ま、早い話SM小説なんですけどね。そっち方面にはトンと疎いわたしであるが、いくつかある責めのテクニックのなかに「放置プレイ」というのがあることくらいは知っている。ただなにもせず放っておくのだそうだ。そのどこがおもしろいのか門外漢のわたしにはさっぱりわからんのだが。さて句にもどろう。「置き去りのO嬢の椅子」というのが、その放置プレイの様子であることは明白である。椅子に縛ったりしてるのだろうか。だが置き去りにしたままだ。おもしろいか? んでまあ「夕立がくる」と。それでも放っておくのだ。目的はなんだ。放置プレイだからだ。ええい、もどかしい。わたしにはそのおもしろさがわからない。わからないまま、もどかしいまま人生を終えていいのか。なんか、ちょっとクヤしい。
- 加藤 知子
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特選句「勝ち名乗り僕の胡瓜は絵文字C」この開き直りが心地よい句となった。英文字Cの胡瓜で乾杯!特選句「密約の罌粟の花ゆれるようワイン」よくぞ、ワイン!色んな事が付き纏う密約は赤ワインである、と言っても納得できる。例えば、よその国のワイン蔵で熟成されたワイン(たとえば外交文書)が解禁され輸入されて、その存在が証明された密約もあった。問題句「戻り梅雨国家論者のダンディズム」・・「懐古趣味」「美学に殉ずる」こととしてのダンディズムだろうか。気になる魅力的句ではあるが、抽象的な気がする。
- 河野 志保
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特選句「短夜の満月溺れ落ちさうな」夏の月の感じをとてもよく表していると思う。私にとっては春や秋に比べ印象の薄かった夏の月だったが、溺れて落ちそうな感じに深く納得。特選句「足跡の人を想えり浜昼顔」…浜辺にいるときの、なんとなく物憂げな作者の姿が思い浮かんだ。足跡の人に想いをはせるというのが新鮮だった。
- 桂 凛火
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特選句「雨ざんざ牛の目のまたたきもせず」心象風景とも読めますね。切なくて素敵です。牛の目がよかったです。問題句「浜木綿も太陽も私も斜め」浜木綿と太陽が斜めは、意外性があり、面白いと思いますが、やはりリズムが整わないのと「私も」の「も」が気になりました。
- 谷 孝江
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特選句「夏帽子そらへ還れるやうに白」メルヘンの世界です。きっと帽子のリボンも白でしょうね。青空へ飛び立つ白い帽子が美しいです。特選句「日焼けの子七色ペンで象を描く」素直で腕白で元気一杯の子でしょうか。次は、澄んだ秋空に精一杯首をのばしているキリンの絵描いてください。楽しい夏休みでありますように。
- 若森 京子
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特選句「こころに隙(げき)こんなにもおじぎそう」繊細に物に反応する性質を持つおじぎそうが、心の隙間に沢山忍び込めばどうなるのかと面白い連想を拡げ、その深層心理をさぐる興味がある。「隙(げき)」も一句を引き締めている。特選句「喉に葛きりうたまくら汲みそこね」葛きりの喉ごしが余りに良いので、歌枕を掴みそこねた。古典的な言葉から日本人の心理の綾を美しく捉えている。二句ともに、心象風景であり抒情詩でもある。
- 小山やす子
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特選句「赤い鼻緒のたましい集まる鬼灯市」は何十年と言う時を遡り別の世界にタイムスリップしてしまいました。特選句「萍よ括弧はずれてつまらない」は作者の自由自在な心に触れて愉快でした。
- 稲葉 千尋
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特選句「蹲みしは胎児の象(かたち)草を引く」まさにいいえて妙。特選句「柿青む水売りの町塩の街」日本には無い「水売」それが日本にもありそうな。
- 高橋 晴子
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特選句「戻り梅雨国家論者のダンディズム」国家論者という言い方、ダンディズムには伊達ごのみで殊更人目をひくように派手に振舞うという意があるので痛烈な批評をこめた句。それを抽象に終わらせていないのが戻り梅雨の空気感で成功している。問題句「紫陽花や憲法変へずに自衛権」集団的自衛権が問題なのであって、それを自衛権と略しては意味をなさない。憲法変へずに≠煬セ葉だけ、紫陽花も効いていない。問題句「覆面の国家よ虹へ捧げ銃」言いたいことが具象化していない、捧げ銃も頂けない。虹にふさわしい言葉が欲しい。
- 古澤 真翠
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特選句「頬に添ふ風とハミング青田かな」心に澱を抱えている時程 心に響く作品が出来るように思います。そういう意味では、厳しい現実に出逢うのは、至福の時なのかもしれません。今の私は…さてどちらでしょう?「風とハミング青田かな」心に響く言の葉です。
- 野田 信章
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特選句「特選句「昼顔やわたくししばらく謹慎中」は中句以下のしおらし気なフレーズと、「昼顔や」の、この季語の持つ物の本情とが相俟って、読み切った時に、しれっとした乾いた屈折感の手応えを覚える。この句の魅力はここにある。次に問題とした「逃げ足のセクシーな蜘蛛放蕩爺」は、中句までの素敵な把握を簡潔に仕上げてもらえるだけで十分な気がする。「放蕩爺」のこの部分はダメ押しの感が強い。「紫陽花と私異端者となる夏空気」の句は、下五句が問題と思う。句意の上では「夏」で一端切れるかと思うが、「夏空気」と読めてしまうので、ここが浮いた生硬なコトバのままで句全体まで生硬な感じが及ぶ。中句を自己表白の視点のおもしろさは捨て難い。
- KIYOAKI FILM
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特選句「こころに隙(げき)こんなにもおじぎそう」小説こころにあてて書いたのだろうか。植物ののんびりとした美しさにこころが癒される。問題句「覆面の国家よ虹へ捧げ銃」現在の戦争について作った詩歌、平和を願う方と過激を求める方とで互いに怒り合うから苦しい。この句の「国家」を「クニヤ」と読んだ。そう読むと虹が美しく見える。
- 中西 裕子
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特選句「雨ざんざ牛の目のまたたきもせず」雨の中、牛のつぶらな瞳がうかんできます。特選句「こころに隙(げき)こんなにもおじぎそう」なんとなく哀愁がかんじられ、おじきそうの、かわいさがひときわこころにしみます。はじめまして。野崎様の熱情にひかれて参加させていただきます。まったくの素人ですが続ければなにか見えるでしょうか。よろしくお願いします。
- 藤田 乙女
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いつも切羽詰まってやっとのことで作句や選句をしていて、気持ちも下降気味でした。しかし、先月私の俳句の誤読●を読ませていただき、こんなふぅに鑑賞していただけるのかと、とても楽しくなりました。自分も弾む心で俳句と向きあっていきたいと思いました。ありがとうございました。
- 田村 杏美
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特選句「万緑のふところにいて決断す」万緑にある、ふところの広さのようなものに共感しました。青々とした万緑は、すみずみまで力が満ちているようなきがします。決断すと言いきったところにも、作者の意思の強さを感じました。
- 野ア 憲子
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特選句「紫陽花よ鏡の中は私だけ」四国霊場第八十八番札所大窪寺のすぐ前に、谷間一面を埋め尽くすかのような紫陽花の群落があります。揚句を一読したとき、その景が浮かんで来ました。読者に連想させる力を持った作品です。中七下五に、俳句作者としての矜持を感じます。問題句「密約の罌粟の花ゆれるようワイン」ワインで決まる、このリズミカルな一句。このゆらめき、危険な香り、ぞくぞくします。限りなく惹かれる故、敢えて問題句にしました。
句兄弟・袋回し句会
おおかみに螢が一つ付いていた
- おおかみの誘惑螢の飛び去りぬ
- 三枝みずほ
- 蛍火や描く文様前衛書
- 漆原 義典
- 螢(ほうたる)のひとつに私よばれけり
- 高岡 晶美
- 髪に肩に螢をかざれ仔狼
- 上村 良介
西瓜
- 明日まで西瓜の種を飛ばしけり
- 亀山祐美子
- 絵手紙をはみ出してゐる西瓜かな
- 景山 典子
- 闘争心出して快感西瓜割り
- 侑 海
- すごすごと黒猫ゆくや西瓜畑
- 野ア 憲子
誘蛾灯
- 火の鳥になれぬものども誘蛾灯
- 亀山祐美子
- 使うことなき誘蛾灯でありにけり
- 木しげ子
花子とアン
- 梅雨明けや花子と歩む動物園
- 尾崎 憲正
- 蝉時雨「花子とアン」のはじまれり
- 野澤 隆夫
- 「花子とアン」妻よソーダ―水とける
- 丸亀葉七子
天
- 豪快な一打を放つ炎天下
- 景山 典子
- 炎天の自転車の子ににらまるる
- 野澤 隆夫
- 炎天を真っ正面に遍路行く
- 丸亀葉七子
浜
- 浜豌豆私は美しいだけか
- 侑 海
- 風にゆれ何かにゆれて浜の蟇
- 野ア 憲子
句会メモ
句会が始まる、10分前くらいに、句会場へ着きました。すでに、数名の方が、部屋の前で待っていてくださり、感激いたしました、来月は、もう少し早く参ります。今月は久々に岡山から高岡晶美さんのご参加があり、若い熱気漲る句会となりました。侑海さん発案の、金子兜太先生の名句<おおかみに螢が一つ付いていた>の句兄弟(原句に触発されて生まれた)の句を、袋回しのお題の一つとして、ご参加の皆さまに創っていただきました。NHKの人気番組<花子とアン>も、ズバリ、お題に登場し、個性豊かな作品がたくさん誕生しました。全句掲載できないのが残念です。あっという間の四時間でした。8月の当日句会では、俳句の朗読をまじえたサプライズ句会を予定しています。いつもの会議室が取れず、完全防音の練習室での句会となりますので、ちょっと趣向を変えた次第。存分に、楽しみたいです。ただ、事前投句はいつも通り、第3木曜日が締切りの、通信句会です。当日句会は、第4土曜日になっておりますので、ご注意ください。飛び入りも歓迎いたします。