香川句会報 第48回(2015.02.15)於、サンポートホール高松

事前投句参加者の一句

   
雪ふたゝび反芻始める序章 久保 智恵
月の夜猪のぬた場のなまめきて 稲葉 千尋
百五十円の牛乳贅沢なる狼よ KIYOAKI FILM
春兆す韻律向うの扉より 桂 凛火
指相撲の指がつめたい真昼かな 小西 瞬夏
蒼空の痛みに抱かれ冬案山子 小山やす子
春めきて土の黒さの極まれり  尾崎 憲正
春耕や眠りし蛙にノックする  漆原 義典
白椿気高さもまた泥に堕つ 銀  次
傘ひらく一月どこまで葬後の景 野田 信章
塩田の筋目くつきり寒日和 郡 さと
いつまでも刺さる言葉よ冬北斗 月野ぽぽな
春暁柳乳首しっとり立つような 加藤 知子
鳥帰る書棚にいまも罪と罰 谷 孝江
健さんの横顔さびし一月号  野澤 隆夫
唄ひだす歩幅のゆるぶ春の水 亀山祐美子
父泣けば銀幕に螢いくつかな  竹本 仰
春隣町の頼れるおじいさん 三枝みずほ
橙をもちて肥後より友きたる 中西 裕子
節分に祓われた鬼や密談議 古澤 真翠
青空に白梅ひとつ手術室 高橋 晴子
素心蝋梅手暗がりをぴよと鳴く 矢野千代子
内科医の椅子の綻び春よこい 中野 佑海
春浅し八栗屋島は泰然と 木 繁子
新雪踏む私が二匹目の獣 河野 志保
つぶやきつまた笑ひつつ春の川 景山 典子
難聴のふたりブラームスは冬けむり 若森 京子
たい焼きを背びれから食ひ春の星 田村 杏美
根茎にて咲く妙法の雪解かな 増田 天志
三月の詩を吹きかけ窓磨く  三好つや子
魚の目に紅のあり涅槃西風 重松 敬子
潮騒はたましひの音梅ひらく 野ア 憲子

句会の窓

月野ぽぽな

特選句「潮騒はたましいの音梅ひらく」・・「潮騒はたましいの音」海と共に暮らす人の感受性が捉えた人類いや全生命の普遍だろう。春の始まりを告げる梅の開花が上5中七の思想のエネルギーをしっかりと受け止め、スケールの大きな命の讃歌となった。

尾崎 憲正

特選句「鳥帰る書棚にいまも罪と罰」春が近づく自然の移ろいを“鳥帰る”で表現し、これを書棚の本と配合した点に作者の目が光っています。しかも書名は“罪と罰”。今の政治の愚かさが痛烈に批判されていると感じるのは深読みでしょうか。「春浅し八栗屋島は泰然と」八栗や屋島と言っても、香川県東部地域の人にしか分かりません。しかし泰然と構えています。泰然は作者のお気持ちなのでしょう。必ずしも万人に理解される必要はありません。実景です。問題句「百五十二円の牛乳贅沢なる狼よ」意味するところがよく分かりませんでした。

中野 佑海

特選句「八朔に爪立てこんな生きづらさ」です。八朔に爪立てて剥くのって、かなり大変だし、嫌です。黄色い汁は飛ぶし(何故か服に付く)、指は黄色くなるし、酷い時は爪が割れ、爪が指から剥がれます。かなりなダメージです。でも、八朔命なんです。食べずに居られません。人でも、物でも、抵抗のある、癖のあるものに惹かれ、失敗し、意気消沈し、人生の機微を味わうんですね!八朔最高!生きづらさ面白い!ちょっと自虐的でしょうか?特選その二「三月の詩を吹きかけ窓磨く」・・「詩を吹きかけ」るって、なんてロマンティックなんでしょうか!この息で窓を磨くと、見える景色は全て、童話の世界って事に。アリス イン ワンダーランド。私も何年も磨いていない窓に「窓よ窓、私を30年前にしておくれ。」なんてね!ビックリマークだらけの選句の中野佑海でした。

増田 天志

特選句「チョコボンボン二月の沼の少女的」静寂に秘められる蠢動。末語の軽快な筆致に脱帽

郡 さと

特選句「春隣り町の頼れるおじいさん」昔の日本の原風景があります。無理がありません。これも俳句の中の俳句です。封筒回しから、 「うすらひや風のゆがみと日のゆがみ」美しくて、儚くて不安定な薄氷の季語の本質を良く突き見事に句にしていると思う。ゆがみが上手いと思う。「薄氷は悲し日陰を漂ひて」の句も心惹かれました。

竹本 仰

特選句「冬晴れの水槽に魚移しかへ」ある短編小説の末尾を思わせるようなタッチのさわやかさを感じました。水槽の魚は、金魚なのかも知れませんが、「魚(うお)」としているのがいい、それによってこの人の内面の表わしがたい匂いをさり気なく映していると思いました。また、この「移しかへ」という挙措が新鮮に感じられ、叶えられぬかも知れないけれど、あえて明るい方に向こうという健気な姿を思い描かせてくれます。「奥の細道」の旅立ちの場面の句に、「鳥啼き魚の目は泪」がありますね。あの門出という大いなる変化に、魚はけっこう効いていて、感情が見えにくい生きものだけに、この謎(I)をうまく生かすという手法が、何だか魅力的だなあと、あらためて「魚(うお)」の語を礼賛いたしました。特選句「たい焼きを背びれから食ひ春の星」たい焼きを、ふと思いついて背びれから食おうとしたものか、それとも何となく背びれから食べている自分に気がついたものか、ここには「背びれから食」うという発見が、いやことによると事件が、ナンダロウコレハ?と思わすところがあったんでしょう。そして、おそらくそこに呪術的な意味合いを感じ取ったんではないかなと、推察するわけです。そうだ、この食い方が何か、そう、どこかに引っ掛かっていくのかもしれないというつぶやきを、ふと漏れ聞いたような。私的な連想から言うと、梶井基次郎「檸檬」で、「さうだ」と袂の中のレモンを丸善の画集の上で試してみたいと感じたあの思いつきに通じる世界のことだなあと。いやいや、なかなかくすぐったい、いい句だと思いますね。今回は、私だけそう思ったのかも知れませんが、採りたいと思った句が多かった(上記他に六句ほど)です。自分だけが、うかうかしているような。来月はもっと気合いを入れてと、猛省した次第であります。いつも、ありがとうございます。

加藤 知子

特選句「新雪踏む私が二匹目の獣」・・「二匹目」でいただく。自然との共生の中で、敬虔にかつ謙虚に暮らす作者がみえる。特選句「牡丹雪しづかに早し心電図」牡丹雪と心電図、異質のもの同士をぶつけて成功していると思う。ある人の句に「心電図のところどころに菫かな」があるが、似たような経験の句だろうと思った。問題句「尼僧ゆく更地にふわり遊子おき」上5中7までいい感じできて、下5の「遊子」は「旅人」として使用してあるのかわかりませんでした。もし旅人を更地にふわり置いていく尼僧なら、出会いたくないが・・・。よろしくお願いします。

漆原 義典

特選句「春暁柳乳首しっとり立つような」を特選にさせていただきます。柳の芽が羽毛におおわれずっと伸びるさまを、乳首がしっとり立つと表現しているところに、妖艶なエロスと温かい母性本能を感じ、素晴らしい句だと思い特選にさせていただきました。句会で句一覧を見た瞬間に特選句としました。NHK日曜日美術館「自分のことば自分の書〜書家で詩人・相田みつを」・・感激しましたね。不遇な時期にも自分の理想を持ち続け、自分を高めていった相田みつをを尊敬しますね。私も自分自身を少しずつでも高める努力をしていきます。

野澤 隆夫

2月の句会は参加できず残念でした。水曜日のコンサートで貰ったと、人のせいにしてます。特選句「春兆す韻律向う扉より」風邪がなかなかすっきりせず、昨朝再度、かかりつけの内科へ。点滴をお願いしました。病室で点滴を受けてて、ふと575の韻律が浮かびました。 「点滴のしたたり見てる春の風邪  隆夫」そして昨日の午後に投稿句集が届き「おお!これ!これ!」と。時に小生にも向うから扉を押してくれるようです。特選句「鳥帰る書棚にいまも罪と罰」小生の本箱にも新卒の頃に読んだ古い本が残ってます。時に整理をしてるのですが、それでも捨てがたく残る本があります。加賀乙彦、梶山季之、エラリイ・クイーン、イアン・フレミング。

三好つや子

特選句「春隣町の頼れるおじいさん」子どもの頃、こういうご隠居が身近に居て、町内のいざこざを上手に解決していたようだ。下町育ちの私には、とりわけ懐かしく感じられ、春隣の季語が効いていると思いました。特選句「青空に白梅ひとつ手術室」生命の綻びを繕う聖なる空間に五体を預けた作者の気持ちが巧みに表現され、心惹かれました。問題句「鳥帰る書棚にいまも罪と罰」上五から中七下五の展開に新鮮さがなく、「罪と罰」も常套的。表現次第では佳句になると思い、問題句にしました。 

若森 京子

特選句「鳥帰る書棚にいまも罪と罰」ロシアに変える渡り鳥と自分の家にある「罪と罰」とのつながりに古い懐かしいロマンを思う。特選句「三月の詩を吹きかけ窓磨く」春を謳歌する喩の上手さに感心した。

KIYOAKI FILM

特選句「指相撲の指がつめたい真昼かな」昭和ブームも過ぎ去ったように感じる。しかし、恐ろしい世相のなかでほっとする第一印象を覚えた。しかし、平和、と言ってはいけないかもしれない。一句、残酷なように見える。「真昼かな」に、激しい緊張感。問題句「しゃぼん玉ちいさな星のものがたり」問題句というより、好きな句。キャッチコピー的な切れが好きです。「しやぼん玉ーちいさな」しやぼん玉は大体小さいので二重に重なっているか、どうか、分からないですが、なにか、コピー的な世界を感じるので問題句にしました。でも、好きな句です。

桂 凛火

特選句「難聴のふたりブラームスは冬けむり」静謐で不思議な魅力のある一句です。難聴のふたりとブラームスは冬けむりの取り合わせは、絶妙だと思いました。かなしくもなく、ただ静かに聴く二人の絵が浮かんできます。ブラームスは冬けむりという断定もよいと思いました。問題句「臘梅や庭に雅楽の荷が届く」・・「「雅楽の荷」の意味がよくわかりませんでした。「雅楽の楽器」ということでしょうか。にしても「庭に」何故届いたのか・・。ここもやや疑問です。が蝋梅と雅楽の響きあいが好きでした。

銀  次

今月の誤読●「早春や猪と私の微妙な空間」。マンガ「空手バカ一代」によると空手家・大山倍達は若き日、数度、素手で牛と戦ったという(そのうち何頭かは即死させている)。プロレスラーの藤原喜明は熊と戦い、これは引き分けに終わった。格闘家はときとしてどう猛な獣と戦い、おのれの力量を試すのだ。この句の「猪と私の」戦いはそれらを連想させる。「微妙な空間」というのは、言うまでもなく「間合い」である。「私」が素手であるのか得物を持っているのかは不明だが、その間合いが勝負のわかれ目なのだ。ただ上五の「早春や」という季語が(言っちゃあなんだが)なんとものどかで、どうも悲壮感に欠けるのだ。想像するに、この対決、必死の戦いではないようだ。たがいに汗を流すこころ持ちで相対しているのかもしれない。この両者にはどうやら友情さえ感じられるのだ。すなわち「稽古」。金太郎と熊の関係と似ている。だとすれば、これぞ達人の境地。もはや多言は要すまい。かく言うわたしも含めオトコはかくあらねばならない。

重松 敬子

特選句「新雪踏む私が二匹目の獣」雪が、眠っている野生を呼び覚ました瞬間をうまく捉えていると思います。私なども雪が降ると何故か血が騒ぐのです。

景山 典子

特選句「鳥帰る書棚にいまも罪と罰」若い頃読んだ、ドストエフスキーの「罪と罰」を作者は今もずっと持ち続けているのでしょう。「罪と罰」は人間にとって一生ついて回る重いテーマ。作者はこの動かし難いテーマを胸に抱えつつ、今年も北の空へと帰っていく鳥を見上げています。斬新な取り合わせの、深みのある重厚な一句だと思いました。

三枝みずほ

特選句「新雪踏む私が二匹目の獣」視点の面白い句で、人間から見れば獣と人の区別は明確ですが、新雪から見ればどちらも雪を汚す獣。そんなことを一匹目の足跡を見て気づいたという作者の発見に感動しました。特選句「八朔に爪立てこんな生きづらさ」個人差はあると思いますが、爪が短くても長くても八朔はむきにくい。やっとの思いでむけても桃のように甘いわけではなく・・・「生きづらさ」がとても共感できました。         

稲葉 千尋

特選句「早春や猪と私の微妙な時間」早春の峠で猪と出会った瞬間を想像する。微妙な空間がいい。特選句「難聴のふたりブラームスは冬けむり」風のない静かな日を思う。まっすぐに昇る冬けむり、そして流れるブラームスの曲。ゆっくりと流れる時を思う。

河野 志保

特選句「三月の詩を吹きかけ窓磨く」鑑賞…「三月の詩」とは何だろう。具体的には分からないが、分からなくてもいい気がする。「三月の詩を吹きかけ」がとても爽やかでひかれた。春を待つ作者の日常と受け止めた。

小西 瞬夏

特選句「新雪踏む私が二匹目の獣」自分の前に足跡があった。それは人間のようでも、犬や猪のようでもある。そしてそれに重なる自分の足跡。この地球に生きている私とほかの生きもの。同じ命を「獣」ととらえ、足跡を通して日々の営みを描いた。自分が二番目であるという謙虚さ、そしてそれを二匹目と把握したところの新鮮さ。

谷 孝江

佳句ばかりで苦労しました。いつものように私の好で選びました。特選句「いつまでも刺さる言葉よ冬北斗」昔々から私にも小さな棘が心の深い所に刺さったままでいます。負い目になったり気づかない振りをして避けて通ったりです。そしてまた、私も気づかない所で言葉の傷をつけてしまっているかも知れません。辛いことです。特選句「新雪踏む私が二匹目の獣」朝目覚めたとき夜更けからの雪がふっくらと積まれてあります。(また雪かァ)と思う反面この美しい気高さ、に決して汚してはならないような不思議な思いにも捕らわれます。誰かさんの足跡を頼りに「二匹目の獣」になって買い物に出掛けようとおもいます。

田村 杏美

特選句「春めきて土の黒さの極まれり」春の土の黒さには、「極まる」という表現がぴったりだと思いました。特選句「潮騒はたましいの音梅ひらく」潮騒がたましいの音だと思う作者の感性に惹かれました。海は生物が生まれ、死んだあとにまた行き着くところ?みたいなものだと思っているのですが、この句はその感覚に似た雰囲気を感じました。夏の海だと怪談のようですが、梅がひらく浅春だからこそ良いですね。

亀山祐美子

特選句「三月の詩を吹きかけ窓磨く」が気になるのだが、‘一月’あるいは‘六月’‘七月’‘八月’‘十月’と動き、三月でなければならなのが解らない。そうか、別れの、巣立ちの時期だから特別なのだと納得したので特選にいただいた。また、「魚の目に紅のあり涅槃西風」は、新鮮な魚なら澄んでいるだろう。‘紅’が血の色なら、朽ちつつことを現すなら「涅槃西風」は合い過ぎるので落としました。相変わらずパズルのような句が多い。自分のもそうだから他人のことは言えないが、自分の言いたい事を過不足無く表現できたときは、すっきりしたものになっていることが多い。わかりにくいのは、試行錯誤中ということか。そんな句は棄てちまった方がいいんだけれど、見る方向を変えてみる等々助平根性が身に付き過ぎてなかなか捨てきれない。そんなときは熟すまで抱えておく。孵化するか腐るかは時間が教えてくれる。時間は偉大な先生だ。 

中西 裕子

特選句「父泣けば銀幕に螢いくつかな」お年をめしたお父様が昔の切ない記憶をよみがえらせお泣きになったのか、なにか情緒を感じます。先日は人も少なかったけれどそのぶん皆様のご選考が聞けて楽しく勉強になりました。

古澤 真翠

佳句が多く、本当に選句に悩みました。特選句も こんなに悩んで選ぶのは初めてなほど、どの句にも魅せられました。「古の風の寝息や薄氷」と詠み込んだ作者の感性に 感動しました。「いつまでも刺さる言葉よ冬北斗」は、厳しい現実を美しく昇華させた表現力に惹きつけられました。

野澤 信章

特選句「難聴のふたりブラームスは冬けむり」一句の視点を現在に置くことで、かって二人で聴いたブラームスの楽曲の景の蘇生とともに、今また難聴故に「ブラームスは冬けむり」と耳を傾ける二人にとっての至福の景が展けてゆく。中句以下の確かな把握が美しい。心和む作である。問題句とした「梅の香や兄の公報母の顔」世代的にも私の直接的間接的体験を基に、この句を兄の戦死の公報であるとほぼ断定して読ませてもらった。そうすると、配合された上、中、下の句が緊密に響き合う映像として現出してくる。その上で、時代の変遷のことを考えると、一句の簡潔な前書は必要であろうと問題提示したい。これはあくまでより良く伝達させるためにである。真に一句を生かすための前書ならば必須のことと考える。

高橋 晴子

特選句「寒月光ぬけて心音透きとおる」寒月光を浴び、清浄な心持になって、心音まで透きとおるような気がした。読む人の心まで洗われるようだ。問題句「八朔に爪立てこんな生きづらさ」八朔の香りが生気を強くしたのだが、「こんな生きづらさ」がわかるようで言葉だけに終わっているように思う。むしろ、肯定的に捉える工夫をした方が自分の力になる。いい句なので惜しい。

野ア 憲子

特選句「素心蝋梅手暗がりをぴよと鳴く」じわりじわりと心に沁みこんでくる作品です。「素心臘梅」この、限りない哀しみを湛えた透明感あふれる言葉に出会ったのは、俳句初学の頃、染色家の志村ふくみさんのエッセーの中でした。素心臘梅の花に手をかざすと、花が「ぴよ」と鳴く声を作者は確かに聞きとめたのだと思います。これまで、素心臘梅の句を何度も目にしましたが、これほどまでに、生きもの感覚あふれる作品は初めてです。特選句「新雪踏む私が二匹目の獣」眼前に広がる新雪。一匹目の獣の後を追って、一目散に新雪目がけ飛び込んで行く作者の姿が眩しく輝いてまいります。余分なものを全て削ぎ落した、気持ちの良い作品です。問題句「いつまでも刺さる言葉よ冬北斗」どの読み手にも、思い当たるであろう気持ちをズバリと言い当てた鋭い作品です。凍天に輝く北極星との取り合わせが、その深さを存分に伝えています。佳句です。惹かれるからこそ、巧みな感情表現の、その奥にある具体的な何かが、欲しいようにも思えて、敢えて問題句と、させていただきました。今回も素敵な作品がたくさんあり、選がとても難しかったです。来月の、皆さまの作品を今から楽しみにしています。ますますのご健吟を!

(一部省略、原文通り)

袋回し句会

障子

障子戸や源内邸のたばこ盆
郡 さと
心晴れ白き障子に常宿る
中野 佑海

少女

少女いてお正月のお手伝いしておりぬ
木 繁子
知らぬ歌うたふ少女と菜の花行
銀   次
おしゃべりな少女猫柳ほほけるぞ
郡 さと

裸木

ゆらりゆらり裸木のゆく月夜かな
野ア 憲子
裸木が乾布摩擦で暖をとる
銀  次

薄氷

うすごほり秘密を分かち合ふ小指
三枝みずほ
薄氷は悲し日陰を漂ひて
銀   次
うすらひや風のゆがみと日のゆがみ
野ア 憲子

バレンタイン

本命は音痴な人ですバレンタイン
三枝みずほ
バレンタイン高級チョコは自分用
中西 裕子

湯豆腐の向こうに何か句が見える
中西 裕子
この恋に句読点着く夜半の春
中野 佑海

句会メモ

今月は、私の都合で、一週間早く句会を開かせていただきました。娘の産後のサポートをするために半月ほど家を空けるからです。お陰さまで、19日の雨水の日に孫が生まれました。そんな訳で、変則日開催で、いつもより少し人数は少なかったですが、事前投句の合評も、袋回し句会も盛会でした。

香川句会の投句作品は、未発表作品か否かにこだわりません、自信作をお出しください。ただ、俳句は、「生もの」です。一句一句、生き生きとした、今の季節を奏でるような作品であれば嬉しいです。選にはいるかどうか、私自身も、大いに気になるところです。俳句の神さまがいらしたら、叱られそうですが・・この頃の私は、居直って(笑)逆に、無得点を狙い、自由に句を創ることに努めています。結構、楽しいです。17音の中に、自分の思いを存分に籠められたら、例え無点句でも、大切に持っておいてください。いつか、いきなり、思いがけぬ、佳句に変身するかも知れません。金子先生は、よく無点句を御選びになります。

袋回しのお題の中に、句会前日の「バレンタイン」も有り、面白い作品がたくさん集まりました。因みに、常連の男性陣の中、漆原さんは、所用で事前投句の合評の後退席、野澤さんは、風邪でお休み、尾崎さんもお休みの中、中野さんが持参された箱入りのバレンタインチョコは、銀次さんの手に! 銀次さんの嬉しそうなお顔が、とても可愛いかったです。次回は、3月21日(土)の開催です。詳細は、「句会案内」をご覧ください。皆様に、お目にかかるのを楽しみに致しております!!

野ア憲子記
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