香川句会報 第52回(2015.7.18)於、サンポートホール高松

事前投句参加者の一句

        
ゆっくりと蚊に噛まれたる婦人かな KIYOAKI FILM
少年Aの静かすぎる殺意蓮閉じて 伊藤 幸
山越ゆる子らの歓声滝しぶき 藤田 乙女
姉という抗争風味花みょうが 三好つや子
てのひらの一椀の海すまし汁 銀   次
夏至の星手話の円卓華やいで 寺町志津子
真っ赤なるプラス思考のかき氷 三枝みずほ
郭公や陽気な村のオペレッタ 重松 敬子
かたくなに青きままなり我がトマト 中西 裕子
国会へ乱入アヒル手花火弾 増田 天志
促音も暮れもやわらか蚊食鳥 矢野千代子
溜息の底に海月のゆれてをり 亀山祐美子
桃洗ふとき背のまるくまるくなり 田村 杏美
今年また茅の輪くぐりや老夫婦  木 繁子
重心を海に移して夕焼ける 小西 瞬夏
豪雨かなモーゼの杖の試し時 中野 佑海
夏草や川内原発再装荷 尾崎 憲正
青年の殻ばかりなる雲丹の海 桂 凛火
夏の浜鼻に面影志度の女(平賀源内と似ている) 田中 怜子
八月や息をするとは祈ること 月野ぽぽな
ころげこむころげこんだと母鱧を喰ふ 竹本 仰
蛍火や曲線螺旋曼荼羅図 漆原 義典
えごの実や会津に終わりのなき除染 野田 信章
地球儀の北極点に天道虫 郡 さと
太古より子を産む力 百日紅 古澤 真翠
陽炎の小さな式を挙げました 稲葉 千尋
端居して岩波ちくま比べ読む 野澤 隆夫
ふらんす語の対訳のように小糠雨 上原 祥子
したたかに陣を広げて根無草 景山 典子
沢潟(おもだか)やちちは坐禅が癖だった 若森 京子
ともすれば鎖国のような赤いバラ 加藤 知子
星屑になりたいの・・天の川 柴田 清子
背が伸びて十三回忌涼しかり 高橋 晴子
根っからの浄土真宗かき氷 谷 孝江
数式は永遠の謎捻り花 小山やす子
颱風の眼の中の蟇  野ア 憲子

句会の窓

中野 佑海

特選句「親鸞やナチュラルに生きなめくじり(若森京子)」親鸞くらい、ぬらりくらりと自分に素直に生きた人は少ないと思います。この俳句は親鸞に贈りたいです。特選句「てのひらの一椀の海すまし汁」手の中に海の全てを凝縮させて、その中に私の心を遊ばせている。ゆったりと大きい海と繊細な和食の心の対比が素晴らしいです。垂涎物です。暑くなりそうです。お身体大切にして、少し親鸞を真似て、ゆったりぬらりくらりと参りましょう。

上原 祥子

特選句「促音も暮れもやわらか蚊喰鳥」つまったような鳴き声も、一日の終わりのような佇まいもやわらかい蚊喰鳥。コウモリでなく蚊喰鳥だからいいのです。特選句「桃洗ふとき背のまるくまるくなり」形に姿を似せる、またはビジュアルの鸚鵡返しとして、丸い桃を洗う時、背中を丸めてしまう。今、注目のロボット君たちの行動パターンもこのようにプログラムされているのだろうか。「まるくまるくなり」のリフレインの響きが良いです。問題句「姉という抗争風味花みょうが」「姉という抗争風味」で切るのか、「姉という抗争」で切るのかで、意味が違ってくると思います。発想は素晴らしいし、ユニークです。ただ、前述の様に二つ意味が取れてしまうのが惜しい。ダブルミーニングが作者の意図であれば実に秀逸なのですが。

 
尾崎 憲正

特選句「八月や息をするとは祈ること」私は戦後生まれですが、八月という月には、やはり特別な思いがあります。日本はあの戦争で350万人もの犠牲者を出しましたが、その一方で、2000万人を超える人々の生命を奪いました。そこには数限りない悲しみがあって、1945年8月に戦争を終えました。今、生きて息をしている者にとっては、犠牲者の無念さに思いを馳せて祈ることしか出来ません。歴史を直視してこの悲劇を繰り返さないように努めることが、息をしている者に求められています。この句には、細かなことが一切表現されていませんが、簡潔な中に一切のものが言い尽くされていると感じました。

月野ぽぽな

特選句「 重心を海に移して夕焼ける」空がひときわ広くなる海の夕焼けは陸、山あいのものとは趣を異にする。「重心を移して」とは言い得て妙。

景山 典子

特選句「数式は永遠の謎捻り花」・・複雑に絡まり合い、一筋縄ではとても解くことのできない数式と「捻り花」を取り合わせたことに感嘆しました。こんな発想ができるようになりたいものです。その他「炎天の心臓として平和象(月野ぽぽな)」また「八月や息をするとは祈ること」にも惹かれました。無意味な戦いに日本が二度と加わることがないよう強く願い、また祈ります。金子兜太先生のメッセージに心から共感いたします!

増田 天志

特選句「溜息の底に海月のゆれてをり」生きることは、不条理なのでしょうね

KIYOAKI FILLM

特選句「短冊の願いは無事に桃太郎(古澤真翠)」面白い!です。CMがあって、「桃太郎」の面白い劇、を思い出しました。ユニークです。特選句「溜息の底に海月のゆれてをり」これもいいです。この、暗めの斬新さ。憧れます。問題句「真っ赤なるプラス思考のかき氷」好きな方で、特選にしようと考えたけれど、ふと、思うと、中七が「プラス思考の」で、上五が「真っ赤なる」で、俳句の知識は極めて浅いけれど、言葉が足らないような気がしました。「プラス思考の」が一寸…と思って、問題句にしました。問題句というコーナーゆえ、あえてしましたが。

竹本 仰

特選句「背が伸びて十三回忌涼しかり」十三という数字が納得できる句です。実際は亡くなって十二年。お葬式のとき三歳、前回七回忌で九歳だった子が、十五歳。ひょろっとして、緑陰が似合うような昔なつかしい笑顔がそっと。ああ、みんな齢を取るんだと、当たり前の事なのに、目の前に突き付けられると、不覚にも齢を重ねた事への反省と、それにも増して人の成長という涼風が。これが、すこし涼やかな十三回忌という仏事のもつ味にうまく合って、見事に切り取られているなあと思いました。「訳ありの桃ぼんやりと灯りおり(田村杏美)」・・「訳ありの」という導入が、この句の世界の中心を言いつくしていて、明解な作句意識を感じさせます。なぜか売れない桃、なぜか選ばれない人、そのへんの秘密を今から語ろうとするような気配でしょうか。この気配の捉え方がうまく、桃も灯りも一つの世界を緊密に作っていて、なかなか踏み込んでもいるし、拍手はしないけれど、思わず手を揉んでしまうような賛意をしてしまいますね。以上、簡略でありますが、選句しました。他にも、選に入れたい句が、五、六ありました。こうやって見ていくと、また、作りたいという気になっていく自分を感じます。大変、ありがたく思っています。皆さんも同じだと思いますが、あえて日頃の想いを。また、次回、楽しみにしています。今後も、よろしく。皆さん、ご自愛のほどを。

野澤 隆夫

特選句「ゆっくりと蚊に噛まれたる婦人かな」「夏の浜鼻に面影志度の女」それぞれの婦人、女が同じ女性のような感じがしました。夏目漱石『三四郎』の里見美禰子が思い浮かびます。

銀   次

今月の誤読(身の上相談篇)●「かたくなに青きままなり我がトマト」。そうですね、他の畑のトマトは赤々と実っているのに、自分の畑のトマトは青いまま。悔しいですね、不公平を感じることでしょう。社会心理学ではこういう考え方を「となりの芝生は青い症状」といいます。となりの芝生は青々としてるのに、なぜうちの芝生はこんな茶色なのだろう。そういうとき思うのはだれしも一緒です。世界はわたしに味方していない。「青いトマト」さん、あなたもそう思ったのではないでしょうか。でもたぶん他の畑の人は「うちのはこんなにも早く熟れてしまったどうしよう」とうろたえているかもしれません。だれしもなんか不満があるのものです。あなたのトマトが「かたくなに青きまま」なのは心理学的には「上位社会的比較妄想」なのです。自分より上位の現象に嫉妬したり、劣等感を持ったりしていませんか。どうでもいいじゃありませんか。早い遅いはあってもあなたのトマトもいずれ熟れます。そして右隣のトマト畑のオンナは浮気しています。左隣の管理人は株で大損こいています。だったらあなたは勝ち組じゃありませんか。大丈夫大丈夫、あなたはいつでもあなたなんです。どうぞ自尊心を失わないでください。よりよき人生を祈っております。(なお。文中にある心理学用語はデタラメです。身の上相談なんてのもいい加減です。世の中ウソばっか。ケッ)

桂 凛火

特選句「肉体はかくもけなげ市場に鮫(伊藤幸)」・・「肉体はかくもけなげ」のフレーズに心惹かれました。また「市場に」と限定したところにリアリティがでてよかったと思います。鮫の質感がつたわるような気がしました。

小西 瞬夏

特選句「颱風の眼の中の蟇」何が起ころうともどっしりと構えている蟇の姿が浮かぶ。それはまさに鈍感力ともいえる能力。そして颱風の目の中の一瞬の静けさをどのように感じているのだろうか。蟇は作者でもあるのだろう。

重松 敬子

特選句「ゆっくりと蚊に噛まれたる婦人かな」この婦人の,おっとりとして,おおような様が浮かびます。谷崎潤一郎の小説に出てきそう。蚊をつかって、じょうずに仕上げていると思います。

加藤 知子

今回は、入選句の中で気になった句(どなたかにご教示願いたい句)についてコメントです。「みどり児の大あくび山も滴りて(古澤真翠)」。我が家にも初孫が誕生し、その仕草にとろけそうになるからよくわかる句。我がまなじりも滴らん。とはいえ、「も」と「て」がこれでいいのか気になる。「野面積くつくつ笑ふ梅雨茸(亀山祐美子)」。まず「くつくつ笑ふ」が面白いと思って頂いた。そして、梅雨茸という季語について初見だったので検索してみたら「野面積みかくれ墓には梅雨茸(品川鈴子)」があった。野面積みの石垣には梅雨茸がよく生えているのだろうことは察しがついた。自分のことを棚上げにしていえば、上5は推敲の余地があるのでは?「梅雨茸や勤辞めては妻子飢ゆ(安住敦)」を見つけた!問題句:「肉体はかくもけなげ市場に鮫」。拙句「いづれさざんか人体はかくもけなげ」があるので、敢えて問題句に。市場の鮫を見たことがないので正直な処何とも言えないが、句意がわからない。市場にいる鮫の肉体がけなげだといっているのかどうか?

三好つや子

特選句「八月の風にんげんに大楠に(月野ぽぽな)」集団的自衛権が可決され、日本は右に傾きかけているような気がします。この句の「にんげんに」という表現に、戦争反対の強いメッセージを感じました。特選句「根っからの浄土真宗かき氷」門徒歴二十年、日々さりげなく仏事を行っている私ですが、浄土真宗の魅力をうまく説明できません。しかし、浄土真宗ってこんな感じだ、と妙に納得してしまうユニークな句です。「炎天の心臓として平和像」長崎の平和祈念像が鮮烈に目に浮かびました。八月の鎮魂句に共感。

若森 京子

特選句「オカリナ老人五月葉裏の会釈かな(野田信章)」オカリナ、五月葉裏、会釈、一行は散漫な様だが、どの言葉をとっても明るい陽(よう)の言葉、老人の生きざまは是々、清非々廉潔白の道を歩んで来たのだろう。一句から一人の人格がすっくと立っている。特選句「陽炎の小さな式を挙げました」小さな幸せな式を挙げたのであろう、これからの不安も窺える。しかし人生を一歩づつ進む気追も堅実さの中に秘んでいる。最短詩型から限りなき未来が見える様だ。

郡 さと

特選句「エロ本の裸体黴ゆく雨しとど(銀次)」エロ本に黴か自分に黴か、面白い。「巻貝の豊かにねぢれ風薫る(小西瞬夏)」コクトーの〈わたしの耳は貝の殻〉を思いだした。「稲田にて祈る媼や半夏生(漆原義典)」そんなお年寄りもいるだろう。又涼しくなれば、参加させて下さい。

漆原 義典

特選句「真っ赤なるプラス思考のかき氷」行動的な夏をプラス思考のかき氷とうまく表現しているなぁと、作者の感性に感動し、特選とさせていただきました。大変うれしくなる句です。

寺町志津子

【入会ご挨拶】海程誌掲載の、感性、個性豊かな香川句会の作品群に、温かく輝くような風を感じておりました。多作多捨を目標にしつつ、寡作駄作の身にはいささか勇気がいりましたが、お仲間に入れて頂きたく何卒よろしくお願い申し上げます。特選句「姉という抗争風味花みょうが」私は「姉」という存在である。そうか妹(弟ではない)の立場からするとこういう存在であったのか。父母亡きあとの今は互いに無二の存在であるが、存命中のことに思い当ることはある。(抗争)風味花みょうがの味付けが心憎い。特選句「郭公や陽気な村のオペレッタ」(一読、実に気持ちの良い句。緑なす一村全てがオペラの舞台。乳搾りの娘の、羊飼いの青年の、若々しい愛の歌も聞こえてくるようで楽しい。

古澤 真翠

特選句「溜息の底に海月のゆれてをり」清らかな折れやすい心を持ちながら、美しい海月へと昇華させてゆく作者の智恵に脱帽です。「風の宮水の匂ひの茂りかな(亀山祐美子)」鬱蒼とした繁みの中に湧き水を発見した情景が浮かび、一陣の爽やかな風が 私のところにも吹いて来る錯覚に陥りました。私事で恐縮ですが、娘に二人目の孫が産まれて バタバタした毎日の中、皆様の爽やかな句に心洗われております。お目にかかることもなかなか叶いませんが、心より感謝申し上げております。

三枝みずほ

特選句「夏至の星手話の円卓華やいで」夏至の日の出来頃を延々とおしゃべりする。星が夜空に輝いていると同時に、手話の円卓もだんだん華やいでいく。爽やかで未来が明るい印象を受けました。

稲葉 千尋

特選句「太古より子を産む力 百日紅」女性しか子供は産めないが、この力強さは女性のもの、そして百日紅の季語の良さ、見事である。特選句「沢(おも)潟(だか)やちちは坐禅が癖だった」季語と中七以下の散合せの良さ。今回は、選句に迷いました。私の能力のなさか、良くわからない句が多かったように思います。時節柄ご自愛ご健吟をお祈りします。

中西 裕子

特選句「姉という抗争風味花みょうが」姉との抗争というのが、家庭的で、私には姉はいませんが、まわりを見ているとその微妙な感じがわかります。みょうがでちょっと薬味の効いている感じが好きでした。「頭(ず)は一荷ときどき横臥して一夏(若森京子)」頭は一荷というのも、暑い夏ときどき横臥して乗り切らなくてはならない、頭は重いしという意味なんでしょうか。暑さに負けそうな今、共感を覚えます。「ひまわりは地球の出べそ青い空(増田天志)」たしかにそう言われてみればでべそかな、青い空が明るいです。今年の夏は、千客万来のようですでに息が上がっています。皆様もお体大切に。

小山やす子

特選句「少年Aの静かすぎる殺意蓮閉じて」ABCのAと据えたことで誰にでも起こりうる少年の犯罪を暗示しているように感じました。又蓮閉じて・・・のフレーズが妙に安心感を抱かせてくれました。「頭は一荷ときどき横臥して一夏」は主人公のひょうひょうとした生きざまを感じました。「親鸞やナチュラルに生きなめくじり」の句は親鸞と蛞蝓の取り合わせを気に入りましたが、ナチュラルが一寸気に掛かりました。

野田 信章

選句の対象とした中で、勝手に助詞を加減して味読しているのに次の二句があります。如何でしょうか。「ファウルラインの向こうは夏の祭りかな(竹本仰)」「みどり児の大あくび山滴りて」→原句は「ファウルライン向こうは夏の祭りかな(竹本仰)」「みどり児の大あくび山も滴りて」ですね。「ファウルライン」の作品は、「の」を入れることで、映像が立ち上がってくるようです。「みどり児の大あくび山も滴りて」は、ちょうど、先の加藤知子さんのご質問にありましたね。「も」を取ることで、リズムが整い、漲る力を感じます。 ご指摘、感謝です。(野ア憲子記)

柴田 清子

特選句「八月や息をするとは祈ること」オーバーな言い方かも知れないが、この句に出逢ふために、俳句を続けていたのかと思ってしまった。72年息をしている私をゆさぶった特選句です。生まれて来る時も、死んでゆく時も祈。私達の原始は祈り(・・)なんだ。祈りを忘れた時は、もう人間でなくなる。八月の一句として、私の体の一部分に、納めて置きたい句であった。

伊藤 幸

特選句「ともすれば鎖国のような赤いバラ」余りにも美しい真紅のバラ、"Dont touch me!” とでも言っているかのようである。史実の鎖国という単語が新鮮に思えるから不思議。「姉という抗争風味花みょうが」姉妹は生涯のライバル、しかし大事あらば結束も固い。風味であるからして抗争とは言ってもそこは血の繋がり、すぐに修復できる。スックと育った花みょうがが効いている。「炎天の心臓として平和像」集団的自衛権とは何ぞや?戦争反対!と大きく叫ばれている今日、私達は平和の像をしっかと心にとどめ、敗戦忌を前にして戦争を知らない世代でも出来る事は何か、考えねばならない時が来ていると思う。

田村 杏美

特選句「重心を海に移して夕焼ける」海に引っ張られるように、夕焼けがどんどん沈んでいく様子が目にうかびました。夕日が海と空とのあいだでバランスを取りながら存在しているというのが、人間関係とも似ているようでおもしろかったです。

谷 孝江

特選句「夕焼けてゆく未完成な背中(三枝みずほ)」決して未完成なままでなく、何かに立ち向かってゆく逞しさを感じます。子供でもない、大人でもない未来がいっぱいの青年の姿があります。

亀山祐美子

特選句はありません。早くも夏バテです。しゃきっとすきっとはつらつな夏の句。あるいはおどろおどろしいほど身もだえるような句が次回までにものにできるよう、アンテナを高くしたいと思っております。一週間前蜂に刺されました。アンテナが倒れました。立て直し中です。痛いし痒いし参りました。皆様もお気をつけ下さいませ。

藤田 乙女

特選句「ケチャップの染みにあたふた終戦日」70年前の終戦の日を思いました。ケチャップの染み≠ニ終戦日≠ニ言う、日常と非日常の対比が見事です。

田中 怜子

特選句「てのひらの一椀の海すまし汁」黒塗りの椀に白濁している美味しい汁、湯気が見えます。「かたくなに青きままなり我がトマト」家庭菜園で目が行き届きすぎる主の眼差しを感じます 問題句「風評のたまごの孵る蛭蓆」意味がわからない。→風評被害のある水辺の風景でしょうか?

野ア 憲子

特選句「炎天の心臓として平和像」長崎の被爆マリア像を思いました。焼け爛れたマリア像を炎天の心臓≠ニ捉えた作者の発見に惜しみない拍手を送ります。問題句「国会へ乱入アヒル手花火弾」風刺の見事さに脱帽です。ただ、アヒルの手花火弾≠フ方が良かったのでは?今回も、頂戴したい作品が沢山あり、選句にとても迷いました。本句取りの作品も挨拶句として、失敗を恐れず、色んな冒険句に挑戦して行きたいです。今後とも、よろしくお願い申し上げます。

(一部省略、原文通り)

袋回し句会

サングラス

霊園は華やぐところサングラス
小山やす子
サングラス知らなくていいことが多多
柴田 清子

球・珠・玉

水玉の紺が弾けて盛夏なる
柴田 清子
岩に散る球球土用波
尾崎 憲正
すず珠の転がる果ての地平線
銀  次

ケーキ

ブランデーケーキの中に虹立ちぬ
野ア 憲子
ブランデー入りのケーキや夜の秋
景山 典子
はだしになってケーキ盗みに行こうか
柴田 清子

水ようかん

風流の風が流れて水ようかん
銀 次
持つことは待つことに似て水ようかん
小山やす子

屋根

板屋根に隙間がありて大銀河
尾崎 憲正
黒南風や踏ん張ってゐる屋根の獅子
景山 典子

かたつむり

かたつむり遠出といふも庭の内
景山 典子
蝸牛背負いし家や父の顔
漆原 義典
風に揺れ光にゆれて蝸牛
野ア 憲子

台風

口実は台風でゆけ支払日
尾崎 憲正
孫が言う台風くんは帰ったの
漆原 義典
木や草の宴会盛る台風禍
中野 佑海
台風一過どんより池にドラム缶
小山やす子
鬼面の鼻の穴から颱風来
野ア 憲子

句会メモ

事前投句には、先月の上原祥子さんに続いて今月も寺町志津子さんが新たに参加され、ますます多様性を秘めた句会になってまいりました。お二人とも海程同人です。これからの句会がますます楽しくなってまいりました。

サンポートホール高松での句会は、心配していた台風11号も去り、徳島から久々に小山やす子さんも参加され、なごやかな句会となりました。「袋回し句会」のお題<ケーキ>は、先月の吟行合宿に参加された田中怜子さんからのフルーツケーキの差し入れがあり、そのケーキへの挨拶を籠めています。

次回から、ブログに引っ越しの予定です。只今、工事中です。このホームページはそのまま残しておきます。お世話になりました。そして、次回からのブログも、どうぞ宜しくお願い申し上げます。

野ア憲子記
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